あなたは書かれた事のない手紙
いまだ出された事のない手紙
封を切られないまま
大切に言葉をしまい込んで
わたしはそっと考える
その言葉がどんなに心を震わせるかを
わたしは夢を見る
その言葉がどんなに心を燃え立たせるかを
指でなぞれば語りかけて来る
あふれるように流れる水になり
口に含めばわたしの一部になる
空気のように息をするたび寄りそって
わたしの中であなたは生まれる
わたしの中であなたは息づく
その真摯な言葉だけが
あなたを知る手がかりのように
わたしの中であなたは翼を広げて
あの青い空を飛ぶ鳥の自由さで
どこか遠くへ心を運んでゆくだろう
何度も何度も繰り返し読まれるたびに
そうして開いてゆく手紙
白紙に黒い文字で描かれるあなたのすべて