2012年10月18日木曜日

朝の葡萄



君の、夜明けの口唇に
葡萄の粒を含ませる朝
旅立つための翼をいだく
わたしの翼は白いだろうか
それとも燃えて血がにじんで赤く


葡萄の房に朝の雫がこぼれ
風が喜びを歌うとき


ひるがえる鳥の翼よ
光は射して夢の続きを結ぶ
あるいは鳴く鳥の声の限りに
胸に響いている ただ一途


あの葉陰に
あのやさしく戯れた指さき


葡萄は熟して光を帯びた
わたしの愛もあなたを思って満ちる
赤く、それはわたしを流れる血のように
すべて飲み干して
つきることのない泉


遠くどこまでも行こう
たとえまだ言葉がかたちにならないとしても


静かにそっとその目を閉じて――


君の、風に乾いた口唇に
葡萄の粒を含ませて
一度だけの夢をみる朝
口移しで知る永遠のありか
翼は力強く、しなやかに飛ぶ