2014年2月19日水曜日

花ぬすびと



ある日窓から花を投げた
あのひとが受け取ってくちびるに寄せてから
あのひとが好きになった 恋をした
みずいろの花 むらさきの花 そしてあかい花
あのひとはすべて受け取ってそっと胸にしまった
花ぬすびとのように


あのひとは何も言わなかった
互いの瞳のおくを遠く見つめるだけで
ふたりのあいだを雨が降り雲が流れ風が吹いた
思いを 胸にあるはずの幾千もの言葉を
あのひとはすべて受け取ってそっと胸にしまった
異邦人のように


ある日窓から小鳥を放した
きみどりの鳥 ももいろの鳥 そしてしろい鳥 
晴れた空に鳥たちがハートのかたちを描いて
あのひとはほほえんでただ両手をひろげた
わたしは窓を開けて飛んでゆく
あのひとの腕のなかへ
あのひとのこころのなかへまっすぐに


2014年2月5日水曜日

第四夜~第六夜 美容師と入り江と行進



第四夜
夢のはなし。恋人は美容師だ。自分の店を開くという。髪を切ったばかりだったけれど、彼の最初の客になった。やさしく髪を切られるという快楽を知る。


第五夜
夢のはなし。仲間と夜道を歩いている。なだらかな高台の道。ふと左手に入り江が見えた。青い光に照らされて、静かに波がうねっていた。まぼろしのように、そこに行きたいと思った。


第六夜
夢のはなし。何らかの理由で地域の住人は少しずつ粛清されている。ある日、一人の老人が奇跡的に生き返ったとの報せ。私は嬉しくて泣きながら歩き出す。いつしか人々の行進になっていった。




■知らない街、あるいは知っているはずの街を歩く夢を時折見ます。それは都会だったり、田舎だったり。夢の中では知っているのに、実際には知らない街。あるいは本当に知らない街。一体どこから来る風景なのでしょう。夢の街に行ってみたいと思うけれど、夢でしかたどりつけない。街を歩く夢は不思議。