2014年12月25日木曜日

Mamao Chveno









ロシアやセルビアの聖歌も好きですが、グルジア聖歌もたまらなく好きなのです。どこかなつかしいそのポリフォニー。やわらかな歌声に満たされます。「Mamao Chveno 」は主の祈りの歌です。ビザンティン聖歌の中で一番心魅かれる歌かも知れません。正教にとって、歌はもうひとつの祈りであるように。




2014年12月17日水曜日

風のような音楽




指先は頬をすべって触れてゆくやさしい風のような音楽


君の背に耳寄せて聴く森があるざわめき揺れる二人の愛も


黄昏に言葉を失い泣き濡れてモルフォ蝶飛ぶわたくしの夜


白い手にからまる翼いつか見た空の余白へ飛ぼうとしてなお


愛永遠(とわ)にあかいと言って突き刺さる湖面に落ちる君の一葉


風冷えの街海に似て冬の日へ帆を上げてゆく心の船の


めぐり逢い、木の間隠れの鹿のごと見つめ合えれば運命の旅


君の目の燃える雪野へ迷いたい淋しさゆるす鍵をさがして


涼やかな風それとも愛の言葉くちびるこぼれる歌を待ちつつ




2014年11月21日金曜日

十一月のきつね




あの子は障子に射す光を見ていた
目の窓に映るきらきらの光はなぜか心を
胸のおくをきゅんと痛くするの
涙が目の窓にもり上がって
よけいにかなしみというものが近づいてくる


かなしみはうつくしい?


それが何のかなしみかは知らず
ただ波打ち際に寄せる砂が濡れていくように
目の窓に雨が降っているの
光は変わらずこんなにもまぶしいのに


あの子はガラス戸に映る葉陰を見ていた
かすかに揺れる影は心にもちらちらと映って
胸のなかをなつかしさで満たしてくれる
いつか動いていた影 あれは何だったろう
幼なごころに感じていたまぼろし かすかなひみつ


さみしさはやさしい?


指で作ってみたかたちは障子に影を作る
光がまた射してくる ここに
目の窓に雨が降っていても
光は 影は静かに心を満たしてくれるの


やさしさはせつない?


こぼれる赤い葉 縁側に落ちて
ひとこえ啼いて わたしのきつね




2014年10月21日火曜日

葡萄月、そしてダンス



わたしは飲み込んだ、あなたの朝を
くちびるに葡萄は冷たくひかる
あなたの足裏がひるがえって、すべて幻でもかまわない


わたしの森にはもう火が燃えている
白い素足の風が踊る
スカートの裾を揺らし
千年の時のまにまを踊る、ダンス
秋は色とりどりの燃える炎のように


    ね、そばに来て
    わたしの愛はあなたときっと同じ


わたしのギターはやさしくうたっている
樹木には慰めと眠りを
夏の陽射しが恋しくても
わたしには木綿の風が吹いている
素肌にからみつく、あるいは蔓草のように


    ね、キスをして
    あなたの夢はわたしときっと同じ


どこかで誰かが扉をひらく
どこかで誰かが歌をくちずさんでいる


隙間から覗いた青空の残像が
あなたの心に鮮やかな印象を植えるなら


    ね、わたしは確信して
    きっとあなたの目の奥を見る


わたしは飲み込んだ、あなたの夜を
葡萄は冷たくひかる月
そしてあなたの指先をとらえるために、


わたしはステップを踏み続ける、終わらないダンス




2014年9月24日水曜日

ひとしずくの夜明け




ひとしずく、落ちて夜明けを目覚めゆく希(ねが)いを祈りを君の瞼に


白い鳥ふいに飛び立つ海岸(うみぎし)に遥かな時をひとを忘れる


また夏に帰ってゆく旅誰もいない駅にまどろむ麦藁帽子


まだ青い蕾を心に抱(いだ)いては日々は花びら風に散りゆく


永遠を波がさらって声もなくただ砂の城崩れる夕べ


遠い日へ列車は走るこだま、こだま、緑に濡れたおもいでのゆく


さびしさは身を揺する花草原にリュート爪弾く風の横顔


目のおくに河は流れるどこまでもあふれて遠く君の原野へ


灯台は極夜を守る波間より指さす方(かた)へ光はのびて




2014年9月10日水曜日

第十夜~第十二夜 浮島と廃墟と指輪



第十夜
夢のはなし。列車に乗っていた。車窓を見上げると、夜空に木の生えた小さな浮島があり光をこぼす。浮島は次々と出現する。まるで打ち上げ花火のように。世界の終わりの夢を、以前に見た事があったと思い出した。


第十一夜
夢のはなし。電車に乗って廃墟を見にゆく。陸橋の上で見下ろしたその一角には、手前に窓の破れたアパートがあり、誰もいない廃屋の塊の向こうに、沈黙して寺院が鎮座していた。時の壊死をこぞって人は見にゆくのだった。


第十二夜
夢のはなし。どこかの講堂。書き物をしようと机に座ると、書類の下に指輪を見つけた。彫り物のある幅広の銀の指輪だ。左指にはめると、少し大きい気がしたが、私にそれは収まった。待っていたように。




■ときどきファンタジーのある夢を見ます。空に浮かび上がる花火やUFOを見上げていたり、寂しい廃墟を見たり。その廃墟の町は観光地のようになっていました。下には降りられず、高台から続く陸橋でしか見られない仕組み。どうして廃墟になったのか、理由はいらないのだ。時が止まっている、それだけで。



2014年8月26日火曜日

球体の海



透明なものがたりがあった
ひとあし、ふたあし、訪ねていくように
波が岸辺に打ち寄せて


貝殻を拾って、耳に寄せても
波音は聴こえない
わたしの耳には
あなたの潮騒ばかりが渦巻いている


いつしか砂が崩れて夕べになる
(あなたを思う事は永遠に等しい)
朝も昼も
星の届かない夜も
もしかあなたを忘れてしまっても、


遠くで舟の帆がきらりとひらめく
足もとで白い鳥ばかりが飛び立つ
囁いた言葉が胸のおくに反射する


昨日から
明日から
逃れるように




2014年7月23日水曜日

眠れぬ森の



 (雫がすべってはこぼれてゆく
  夜だ わたしだけの夜がはじまる)


眠れぬ森の月が落ちて神話になった
満ちては欠けて欠けては満ちてゆくもの
星はまばたきのなかに流れてゆく


 (あなたの胸のうちにわたしはそっとくちづける)


夜は眠れぬ森につれづれ語るものがたり
姿を変えて夢のいのちを変容を、記憶を生きる


わたしは何になるだろう たとえば夜露
たとえばあなたの頬に流れる涙
こぼれてもうかえらない
こぼれてかえらない虹 遠くあふれてきらめく


 (夜の果てではいつもひとりであるように)


あなたは知っているだろうか たとえば風
たとえばやさしくその指先に触れる花
愛のように ただ静かに触れてゆくもの
愛のように 何ももとめずに


 (雫がすべってはこぼれてゆく
  見つめるようにまなざしの向こうで
  夜が瓦解して やがて)


眠れぬ森の青い鳥をそっと放そう
あなたが道に迷ったらしるべになるように


私は何になるだろう たとえば朝露
たとえばあなたの見ていた夢、その残り香




2014年6月24日火曜日

バラッド



さくら花、いつか出会いを繰り返し君のひとみにこぼれるバラッド


花弁に触れてひかりは遠ざかるこのひとひらに惑うこころを


新緑の夜の涙になきぬれてまどろむ夢に風は滴る


いつか君の心がほしいいつか君せつなくてただ立ち止まる風


やさしさはポケットの中に今もあるソウルメイト、君と僕とは


昼の月夜の太陽夢を見るまだみぬ「声」のその囁きを


雨のなかそっと触れ合うくちびるの降りしきるキス、海があふれる


幾筋の涙をきらり光らせて魚影ひしめく街角の雨


夢だけが僕らを渡す雨上がりさしだす指に虹がかかる日



2014年5月27日火曜日

だれもしらない庭で



だれもしらない庭にだれもしらないあなた
わたしたちは夢をみた
はつ夏のひかりのなかで
あれはあなたの花
ジャスミンのむせる匂いに
秘密めいたあそび くちびるの感触をおぼえた


だれもしらない庭をわたしたちはもとめた
若葉が降りそそぐあなたの目のなかで
ただひとつの言葉をさがした
魔法だった その言葉をくちに含んだ時から
わたしたちの世界ははじまる


夏草がからまるわたしの指に
あなたはそっと手のひらを重ねて


ね、


ささやいた 小鳥のような仕草で
息がとまるくらい 静かな風が流れて


翼が生える夢をみた
きっとわたしたちの背中で育っていた
ひととき の愛
それとも千年のねむりを貪るように
わたしたちは夏草を泳ぐ 終わらない遊戯


ね、


だれもしらない庭にだれもしらないあなた
指をつないで眠った
明日など知らないほほえみで
あなたがたとえわるいひとでも
あなたをたとえ見失ってしまったとしても
ジャスミンの花を髪に挿して
若葉が降りそそぐあの庭で



2014年4月23日水曜日

アグネシュカ 夜明けの森



夜明けの森を夢見た わたしの閉じたまぶたは
光によってひらかれる あなたの白い
春のような指さきで


わたしのためにあなたは生きていた
わたしが悲しいときははらはらと涙を流した
嬉しいときはあなたは花のように微笑んで
黄昏がさびしいと
水のきらめきが美しいとこころを痛める


光と影のようにいつも隣り合って過ごした
もうひとりのわたし 
手をのばせば今すぐあなたに触れるだろう


すみれの花を抱えて途方にくれないように
花の匂いにむせてあなたを見失わないように
一心に森を駆け抜けた 生まれたばかりの足で


 (どこかで鐘が鳴り響く 耳の奥で
  いいえどこか遠い湖の底で)


橋を渡るとあなたが待っている
アグネシュカ 青い瞳にわたしの湖が映る
揺れる長い髪にくちびるを寄せて
わたしはもうひとりのわたしを抱きしめる


あなたをずっと夢見ていた
アグネシュカ 夜明けがもうすぐやってくる
あなたとわたしがひとつになるように
どうか白い指をからめて


あなたに導かれて 夜明けの森を夢見た
森は眼前にひらかれる 翼をひろげた鳥として
ふいに飛び立つ空はすみれいろ


 (どこかで鐘が鳴り響く 耳の奥で
  いいえどこか遠い湖の底で)


 あなたのためにわたしを生きている




2014年4月9日水曜日

第七夜~第九夜 サンダルと湖底と絵葉書



第七夜
夢のはなし。とてもきれいなサンダルを履いて出かける。なめらかな赤地に、ブルーやグリーンの入った不思議な色合い。それはまるで私の一部のようにぴったりと合った。


第八夜
夢のはなし。氷上に穴が開いていて、静かに落ちて沈んでいった。湖はどこまでも透明で、底には赤い花びらに似た生き物がいる。手のひらに乗せて、そっと飛ばした。私はわたしを浮上させるように。


第九夜
夢のはなし。一度きり、逢った人に絵葉書をしたためていた。どこかで見た外国の街並みの写真。結びの言葉は「愛をこめて」。サインしたのは古い名前だった。




■夢の中でサンダルはあまり見ません。いつもは靴といえば、運動靴や革靴なのでした。しかも、どこかの建物の玄関や下駄箱とセットになっています。そして靴を探していたり・・・。ヒールを履く夢は見ない事に気が付きました。ふだん履き慣れていないからでしょうね。夢の中でいい。美しい靴を履いてみたく。


2014年3月19日水曜日

邂逅する夢



明け方の目をみひらいて駆けてゆく夢は邂逅すうつくしい馬


やさしさをあつめて君の手のひらにスノードームの粉雪の降る


君に会うために生まれてきたという光射す薔薇窓少女のねむり 


頬杖で過ごす冬日のオルゴール約束の日は春は近づく 


遠ければ歩き続ける道のあり見上げれば空鉄塔に月


恋しさに砂時計をそと傾ける春まだ浅い君の海辺よ


目の奥を濡らしていつか過ぎてゆく雨のサーカス、青いこいびと 


汚れなき翼をあげるゆびさきで君のイカロス抱きしめるため


くちづけをかわして遠く旅に出る Adieu 太陽と月の輝く



2014年2月19日水曜日

花ぬすびと



ある日窓から花を投げた
あのひとが受け取ってくちびるに寄せてから
あのひとが好きになった 恋をした
みずいろの花 むらさきの花 そしてあかい花
あのひとはすべて受け取ってそっと胸にしまった
花ぬすびとのように


あのひとは何も言わなかった
互いの瞳のおくを遠く見つめるだけで
ふたりのあいだを雨が降り雲が流れ風が吹いた
思いを 胸にあるはずの幾千もの言葉を
あのひとはすべて受け取ってそっと胸にしまった
異邦人のように


ある日窓から小鳥を放した
きみどりの鳥 ももいろの鳥 そしてしろい鳥 
晴れた空に鳥たちがハートのかたちを描いて
あのひとはほほえんでただ両手をひろげた
わたしは窓を開けて飛んでゆく
あのひとの腕のなかへ
あのひとのこころのなかへまっすぐに


2014年2月5日水曜日

第四夜~第六夜 美容師と入り江と行進



第四夜
夢のはなし。恋人は美容師だ。自分の店を開くという。髪を切ったばかりだったけれど、彼の最初の客になった。やさしく髪を切られるという快楽を知る。


第五夜
夢のはなし。仲間と夜道を歩いている。なだらかな高台の道。ふと左手に入り江が見えた。青い光に照らされて、静かに波がうねっていた。まぼろしのように、そこに行きたいと思った。


第六夜
夢のはなし。何らかの理由で地域の住人は少しずつ粛清されている。ある日、一人の老人が奇跡的に生き返ったとの報せ。私は嬉しくて泣きながら歩き出す。いつしか人々の行進になっていった。




■知らない街、あるいは知っているはずの街を歩く夢を時折見ます。それは都会だったり、田舎だったり。夢の中では知っているのに、実際には知らない街。あるいは本当に知らない街。一体どこから来る風景なのでしょう。夢の街に行ってみたいと思うけれど、夢でしかたどりつけない。街を歩く夢は不思議。


 

2014年1月22日水曜日

手のひらの花、そしてあのひとの雪



 (雪降る時間 あのひとの指がきらりとひかる、
  わたしはくもりガラスの向こう側で)


あのひとを思うと 白い雪が降って、
わたしの肩にも髪にも舞い落ちる
そしてわたしは あのひとですべて埋まってしまう
どうか今すぐ来て ここに来て
雪のなかでくちづけて、あのひとを忘れてしまうよう
この世界はあのひとの雪でできている 


 (世界はガラス細工の函のように わたしを、
  閉じこめてうつくしい あのひとしか見えない)


あのひとの手のひらで 花が咲いている、
烈しく火ともえて あかく狂おしくそれは
わたしの胸のおくを焼き焦がす
どうか今すぐ来て ここに来て
雪のなかでもこぼれないようにわたしを支えて
こころは遠く 燠火ばかりが香る


 (手のひらをのべると あのひとを近く感じる
  指と指をむすべば 花は咲き続けるいとしさで)


わたしの 手のひらにも花が咲きはじめる、
どうかここに来て 今すぐ来て
あのひとはわたしを抱きしめてはなさない雪
それともやさしく絡みつく指さきで
奪っていこうとする、このちいさな世界さえも
わたしは雪、そしてあのひとのなかに咲く花になる


 (雪降る時間 あのひとに抱かれてねむる、
  くもりガラスの向こう側でわたしは)