2014年11月21日金曜日

十一月のきつね




あの子は障子に射す光を見ていた
目の窓に映るきらきらの光はなぜか心を
胸のおくをきゅんと痛くするの
涙が目の窓にもり上がって
よけいにかなしみというものが近づいてくる


かなしみはうつくしい?


それが何のかなしみかは知らず
ただ波打ち際に寄せる砂が濡れていくように
目の窓に雨が降っているの
光は変わらずこんなにもまぶしいのに


あの子はガラス戸に映る葉陰を見ていた
かすかに揺れる影は心にもちらちらと映って
胸のなかをなつかしさで満たしてくれる
いつか動いていた影 あれは何だったろう
幼なごころに感じていたまぼろし かすかなひみつ


さみしさはやさしい?


指で作ってみたかたちは障子に影を作る
光がまた射してくる ここに
目の窓に雨が降っていても
光は 影は静かに心を満たしてくれるの


やさしさはせつない?


こぼれる赤い葉 縁側に落ちて
ひとこえ啼いて わたしのきつね




2 件のコメント :

  1. 次にくることばは「いとしさはかなしい?」私の狸はつぶやいた。ところがこの狸は理解力に乏しく、表現力に拙く、しょっちゅう間違いばかりしでかす。この前はせっかくきれいに張り替えた障子に汁をぶちまけ染みだらけにしちまった。狸はそこでぽんぽこりんと泣いて、きつねの啼き声もスルーして、雨がふればシャワーと勘違い、外ではしゃいでいたんだとさ(新編、きつねとたぬきのものがたりより)。12ヶ月の詩の完結編ですか。ひとつでも難解なのに12もあったらわたしの狸は悶絶します。

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  2. 春麗さん、「いとしさはかなしい?」いいですね。おっちょこちょいの狸さんも見ているところは見ていますよ。十二か月の詩はまだ完結ではありません。何気なく月ごとの詩を書いてみたら、シリーズ化して全部の月の詩を書いてみたくなりましたが、まだ書いていない月が・・・。私にとっても狸さんにとっても、まだ当分試練は続くのです。あしからず。

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