2014年7月23日水曜日

眠れぬ森の



 (雫がすべってはこぼれてゆく
  夜だ わたしだけの夜がはじまる)


眠れぬ森の月が落ちて神話になった
満ちては欠けて欠けては満ちてゆくもの
星はまばたきのなかに流れてゆく


 (あなたの胸のうちにわたしはそっとくちづける)


夜は眠れぬ森につれづれ語るものがたり
姿を変えて夢のいのちを変容を、記憶を生きる


わたしは何になるだろう たとえば夜露
たとえばあなたの頬に流れる涙
こぼれてもうかえらない
こぼれてかえらない虹 遠くあふれてきらめく


 (夜の果てではいつもひとりであるように)


あなたは知っているだろうか たとえば風
たとえばやさしくその指先に触れる花
愛のように ただ静かに触れてゆくもの
愛のように 何ももとめずに


 (雫がすべってはこぼれてゆく
  見つめるようにまなざしの向こうで
  夜が瓦解して やがて)


眠れぬ森の青い鳥をそっと放そう
あなたが道に迷ったらしるべになるように


私は何になるだろう たとえば朝露
たとえばあなたの見ていた夢、その残り香