2014年7月23日水曜日

眠れぬ森の



 (雫がすべってはこぼれてゆく
  夜だ わたしだけの夜がはじまる)


眠れぬ森の月が落ちて神話になった
満ちては欠けて欠けては満ちてゆくもの
星はまばたきのなかに流れてゆく


 (あなたの胸のうちにわたしはそっとくちづける)


夜は眠れぬ森につれづれ語るものがたり
姿を変えて夢のいのちを変容を、記憶を生きる


わたしは何になるだろう たとえば夜露
たとえばあなたの頬に流れる涙
こぼれてもうかえらない
こぼれてかえらない虹 遠くあふれてきらめく


 (夜の果てではいつもひとりであるように)


あなたは知っているだろうか たとえば風
たとえばやさしくその指先に触れる花
愛のように ただ静かに触れてゆくもの
愛のように 何ももとめずに


 (雫がすべってはこぼれてゆく
  見つめるようにまなざしの向こうで
  夜が瓦解して やがて)


眠れぬ森の青い鳥をそっと放そう
あなたが道に迷ったらしるべになるように


私は何になるだろう たとえば朝露
たとえばあなたの見ていた夢、その残り香




2 件のコメント :

  1. 眠れる森の美女は民話であるためにいろいろなバリエーションがあるらしい。魔法、王女、眠り、などが共通項。さて、眠れぬ森の神話ですが、ベースは水で、水が形をかえながら風や花や鳥の姿を映すらしい。眠れぬ魔法はどうしたらとけるのでしょう。①魔法をかけられたことを忘れてしまう、②自分自身が魔法使いになってしまう、③魔法も現実も気にしない、④水で洗いきよめる、⑤眠らなければ起きている、————いやはや、考えてみれば魔法には一言も触れてない詩なのでした。夏の夜が明けたから、だんだん現実的になってきました。

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  2. 春麗さん、実は「眠れる森」という現象は忘れていました。いっそ魔法がかけられていたらよかったのに、と思います。眠れぬ森の神話には魔法は出てきません。幻想です、この世界は。もしかしたら、五番こそが真実かと思うのですが、答えは一番としておきましょう。魔法は忘れてしまったのです。

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