2014年2月19日水曜日

花ぬすびと



ある日窓から花を投げた
あのひとが受け取ってくちびるに寄せてから
あのひとが好きになった 恋をした
みずいろの花 むらさきの花 そしてあかい花
あのひとはすべて受け取ってそっと胸にしまった
花ぬすびとのように


あのひとは何も言わなかった
互いの瞳のおくを遠く見つめるだけで
ふたりのあいだを雨が降り雲が流れ風が吹いた
思いを 胸にあるはずの幾千もの言葉を
あのひとはすべて受け取ってそっと胸にしまった
異邦人のように


ある日窓から小鳥を放した
きみどりの鳥 ももいろの鳥 そしてしろい鳥 
晴れた空に鳥たちがハートのかたちを描いて
あのひとはほほえんでただ両手をひろげた
わたしは窓を開けて飛んでゆく
あのひとの腕のなかへ
あのひとのこころのなかへまっすぐに


4 件のコメント :

  1. 岩瀬さんの扱うテーマ、そして技巧の一部が、私の扱うテーマ、そして技巧の一部とピッタリ重なる範囲があって、そんな時にはまるで何を思いながら詩作されたのか、驚く程、私事の様に感じることがあります。この詩もそんな作品の一つで、好みであると共に、色々な意味で共感してしまいました。

    岩瀬さんがどういう詩人に影響を受けたのか、一番好きな詩は何か、凄く興味があります。因みに、私の場合はプレヴェール、アポリネール、リルケ、ネルーダから大きく影響を受けたと感じていて、一番好きな詩は冨士原清一の「稀な薄窓」です。

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  2. Yさん、私は子供の頃から詩を書いていました。空想好きな少女だったのです。影響を受けた詩人は思春期の頃に出会った新美南吉、立原道造、ルミ・ド・グールモンでしょうか。そのほか、無名の詩人の詩やさまざまな詩と出会いました。九年前に現代詩フォーラムという詩の投稿サイトに投稿し始めてから、現在の詩のスタイルが確立したと思います。一番好きな詩は、厳密には詩とはいえないかも知れませんが、聖書の中にある「雅歌」です。これほど美しい恋愛詩を私は知らないのです。

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  3. 雅歌は学生の頃に読んだ様に思うのですが、改めて解説も含めて読んでみました。良いですね。少し物理的な美しさへの賛美が多過ぎる様に思いましたが、それでも良かった。いつか、これ位の長さの作品を書いてみたいと思いますが、多分、夢で終わりそうな気がします。。ご紹介頂いて、有難うございます。その他の詩人さんも読んでみようと思います。

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  4. Yさんの挙げられていた詩人さんのなかではネルーダと富士原清一を知りませんでした。ネットで検索していくつか詩に触れてみたのですが、ネルーダの詩は好みでした。詩にはさまざまな形がありますね。長編詩は読むのも書くのも私は苦手なほうです。。

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