2011年6月9日木曜日

失語の春



涙なみだ花のつぼみを押し抱きながれるままの失語の春の



ほしいまま虚空をすべる鳥にこそつばさに適う言葉も持たず



指さきを染める苺のいじらしさキスするほどのかわいい夢を



見残してまた過ぎてゆく桜雨、次の世までも忘れ得ぬひと



あいすると風の梢をふるわせて頬寄せるきみ若葉は匂う



こだまは返る、胸とむねの青い渚、遠い彼方の鳥のひと声



幾たびも荒地野原に跪くあいするという痛みを赦して



草の穂をゆらす風、今をさらえよ心は惑う感じやすくも



たそがれは本をひらいて目を閉じる頁(ペイジ)をめくる夏の指さき