2013年5月22日水曜日

山鳩の遠く鳴く朝

 
山鳩の遠く鳴く朝
僕は旅に出る
心は遠く動いている
窓の向こう
あの坂を下った道に


風が梢をさやがせて
あれは空に向かって高鳴る心臓
緑の葉が一枚 また一枚
流されてゆく
風に何を告げ別れてゆく
透き通ったまなざしがあれば
明日に透けてゆく


誰も知らない時間がある
光をまとったまま花は微笑み
秘密のことばをささやくのだ
いつか小径の濡れた緑をくぐり抜け
子供に還る
緑の葉が一枚 また一枚
流されて


どこへ
それは旅
一瞬のなかに
ある
永遠


いつも誰かが
呼んでいるような気がした
あれは鳥の声
いいえ もうひとりのわたし
遠い日見失った後ろ姿
はるか草を渡ってゆく風の


山鳩の遠く鳴く朝
僕は夢を見る
緑もえるまだ見ぬ国を
夏が白い手でさし招いている
やわらかな指先で