遠い声を聞いた 海の底のようなはるかな声だ
耳に残る 今はおぼろげな記憶のようだと
貝殻の奥にある秘密の旋律のようだと
遠い道を歩いて抱いてしまった憧れに逢いに行く
人々が集って来る 草を踏みしだき
あるいは土の上を嬉々として踏み固め
どこからともなく湧く水の泡にも似た胡乱だ
どこまでも辿り着かない夢だ
けれど
もう少しで指先が触れるだろうという渇望が
前へ前へと突き動かしている
わたしたちはみな同じ夢を見ている
遠い手触り それとも遠いまなざし
ただそれを知りたいというささやかな欲望だけで