2019年9月14日土曜日

みずうみ



草原の彼方にあなたを見た
昨日の夢のように意味もなさずに
草の葉だけが知っているこの遠い既視


足もとがおぼつかなくなる
一羽の鳥が飛び立って空は青く


(わたしは行方知れずの夢です)
(それとも一羽の迷い鳥)


わたしに手招きする燃えるみずうみ
まぼろしだったのか あなたが顔を沈めて髪を広げた
日々はいつか燃える
後ろ姿も探さずに影法師だけがのびて
今もふいに新しくわたしはわたしのあなたを知る


あなたのための湖面はすでに凪いで
わたしのための簡素なボートだけが
岸辺に寄せてゆくみずうみ
いつか足指を濡らして渡ってゆく
漕ぎ出してゆく
旅するようにあなたのもとへ


(そうしてこの夢から放たれるために)


ここではない草原の彼方にあなたを見る
明日の予感のように唐突にきっと
一羽の鳥が戻ってくる この掌のなか