2008年3月27日木曜日

とらわれの春



わたしの頭にもやがかかってゆく
わたしの目に霞がかかってゆく


何も考えられず何も見えず
わたしはまはだかで歩こうとする
草がからみつき肌を切り裂くのもかまわずに
風になぶられる髪がどんどん伸びてゆき
やがて身動きがとれなくなる
泥のついた爪も土まみれの足も
まるで役には立たない
とらわれ とらわれ


わたしの耳に鳥がまとわりつく
わたしの口に花がまとわりつく


わたしの髪に鳥が巣をつくり
わたしの顔に種が根をはろうとしている
盲目のわたしの眼窩をつらぬいて
花が咲くだろう 鼓膜をつきやぶり
鳥がつんざいて飛び立つだろう
わたしは花粉にまみれてどうしようもなく
小さく唇をひらいたまま
とらわれ とらわれ


永劫しくまれた罠だ
いつかすべてわたしを裏切ってゆくため、の


わたしは樹木 わたしは土くれ
風のふるえ 浮かされた熱
春というやまい



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