2008年5月6日火曜日

水際、まだ浅い夏の



光は満ちてゆく
花のような小舟を浮かべて
ふたたびの光は寄せてゆく
まだ浅い夏の水際に


片足を浸して眺めるだけだ
ドアを細めに開けて
そっと知られぬように
飛び立つ小鳥を慈しむように


森はいつか呼んでいた
枝先に若葉を繁らせて
あんなにも光るのは
まなうらを哀しくさせるため
それとももっと遠くへ誘うため
踊るような足どりでつま先で
歩いてゆく陽だまりの小径
森はいつしか呼んでいた
春のひとみを隠していた


何も持たない心で
指先をそっとすべらせれば
水滴がはね上がり
一瞬の虹を描く永遠


風は追いかけてゆく
いくつもみどりの輪を広げて
ふたたびの風は響いてゆく
まだ浅い夏の水際に



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