2008年10月7日火曜日

ダナエ

 
悲しい歌を忘れられない
あなたがいつか手をのばす
その先に何があるのか
指先は語る事を知らず ただ
まばたきもせずに一心に見つめる
あなたのあの眼差しが欲しいと思う
風さえも忘れる束の間のとき


あの蒼みを帯びた窓に光が射し
わたしの見ているすべてが
鮮やかに色づいて来る
それを季節のせいにしている
何も気づかぬふりで


窓辺の小鳥を逃がすように
あなたをそっと遠くに放したい
あなたは空高く舞い上がり
やがてはじめての雨になる
きらきらと光りながら降りそそぐ
わたしはその雨に打たれたいと願う
たったひと雫だけでも受け止めようと


残されたわたしの指だけがもえて
問いかけの言葉はいつか呑み込まれてゆく
ダナエ ダナエ
手をのばせばあなたが近くにいるのに
触れる事さえためらっている