忘れてください
と、口にした時から忘れられなくなる
ふいにこぼした言葉も
思いつめた頬の感じも
忘れてください
忘れたものは戻ってこないと知っている
ある日ふとまざまざと
風に揺れていた花のかたち
あの赤い色を思い出しても
忘れてください
忘れられたものはどこへ漂っているのだろう
思い出すまで 思い返しても
もう手にとることも
抱きしめることもないというのに
忘れてください
少しずつ砂山が崩れるように
陽だまりの花が萎れるように
忘れてください
こうして言葉にしてしまったからには
忘れるしかないのだと気づく
握りしめていた思いを
そっと手ばなす そっと見送る