2008年12月18日木曜日

忘れるということ



忘れてください
と、口にした時から忘れられなくなる
ふいにこぼした言葉も
思いつめた頬の感じも


忘れてください
忘れたものは戻ってこないと知っている
ある日ふとまざまざと
風に揺れていた花のかたち
あの赤い色を思い出しても


忘れてください
忘れられたものはどこへ漂っているのだろう
思い出すまで 思い返しても
もう手にとることも
抱きしめることもないというのに


忘れてください
少しずつ砂山が崩れるように
陽だまりの花が萎れるように


忘れてください
こうして言葉にしてしまったからには
忘れるしかないのだと気づく
握りしめていた思いを
そっと手ばなす そっと見送る




2 件のコメント :

  1. この宝箱の様なサイトを訪れるのが、大きなワクワクでもあり、少しの恐怖でもある。送り物の包みを解く様な、ときめきに似ている。一つ一つの作品を読む度に感無量になり、心をゆっくりと鎮めない限り、読み進めることが出来ない。ここに消費品ではない詩群がある。詩と付き合って長いが、初めて初心に立ち返る気がする。詩が果てしもなく美しく、遠かった少年の時分に。

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  2. Yさん、現実逃避だといわれようと、詩は美しいものです。少なくとも私にとっては。迷った時期もありましたが、自分の夢見るものを書こうと決めたのでした。今また私も初心に返らなければいけませんね。

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