2009年5月20日水曜日

その花



涙を流して見つめ合う
あなたは左のまぶたから
私は右のまぶたから


唇から白い花びらはらはらこぼれ落ち
その花が水に流れてゆこうとも
あなたは私を知る事はない
私もまたあなたを知り得ず


触れたのは花の輪郭なのか
触れたのは花のこころなのか
まぽろしのように薫るだけで


いつのまにか咲いてしまったのに
その花を名づける事もかなわなくて
ただ唇から白い花びらこぼれ落ち
はらはらこぼれ落ち


    花を捧げようか
    このこころを
    どうか傍らに
    跪かせて

    
あなたの左の目に私が映る
私の右の目にあなたの微笑みが
どこか遠い遠い誰も知らない岸辺
名もない花がゆれている


指先だけがいとしいと囁いている



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