その花
涙を流して見つめ合う
あなたは左のまぶたから
私は右のまぶたから
唇から白い花びらはらはらこぼれ落ち
その花が水に流れてゆこうとも
あなたは私を知る事はない
私もまたあなたを知り得ず
触れたのは花の輪郭なのか
触れたのは花のこころなのか
まぽろしのように薫るだけで
いつのまにか咲いてしまったのに
その花を名づける事もかなわなくて
ただ唇から白い花びらこぼれ落ち
はらはらこぼれ落ち
花を捧げようか
このこころを
どうか傍らに
跪かせて
あなたの左の目に私が映る
私の右の目にあなたの微笑みが
どこか遠い遠い誰も知らない岸辺
名もない花がゆれている
指先だけがいとしいと囁いている
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