2011年1月13日木曜日
冬のオフィーリア
雪が降ってくるのです
音もなく 羽毛のように
やわらかく 花片のように
雪が降ってくるのです
見えない雪がすべてを包んで
私を埋めてゆく 冬の森
ごらんなさい
遠くから蹄が駆けてきて
立ち止まる影がある ふいに
木間から私を覗う冬の瞳よ
振り向くと誰もいない
ただ 雪だけが れいれいと
ねえ あなた
胸がくるしいの
思いだけが泡のように
立ちのぼる 立ちのぼって
空の果てから落ちてくる
あれは雪、雪です
(何も知らない
知ってはならないのです)
指がのびてきて頬に触れる
なぜそんなにやさしい手つきで
私は息もできず水に溺れ
抱き合ってくちづける冬の川
永遠は流れゆく 私のなかへ
私の口腔をつき破り
ねえ あなた あなた
木霊する、あなた
見えない雪を花のように飾る
このたえまないもの
(未来の夢を見る
あるいは過去へ遡るように)
雪が降ってくるのです
音もなく 羽毛のように
やわらかく 花片のように
雪が降ってくるのです
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