2013年11月20日水曜日

白い鳥、飛んでいった



ね、といって目を閉じた
静かにその翼を閉じるように
ね、あなたの見る夢のなかに
白い鳥、翼をひろげて飛んでいった
その羽ばたきがかすか、耳もとにくちづける


ね、あなたは今も孤独なのだろうか
あの湖にさまよう淋しい舟のように
いつか二人で沈んでゆく夢を見た
わたしは見上げて あなたの指さきが消えるのを
あぶくが涙のように立ちのぼるのを


白い鳥は言葉をうしない、わたしはイラクサを編む
かじかんだ指は時を編む この心あなたに届くように


それは誰も知らない、二人だけの時間
いつか指さきが触れる暁の彼方に
あなたは微笑むのだ わたしをその目でじっとみつめて


ね、あなたの見る夢のなかに
たとえ遠くても行こうとおもう
わたしはきっと白い鳥になってあなたのもとへ
 泣きながらなきながらあなたのもとへ
わたしたちの翼はまだ若くこんなに力強い


白い鳥、翼をひろげて飛んでゆく
白い鳥、あなたの見る夢のはるか遠くへ 彼方へ



2 件のコメント :

  1. イラクサのくだりが気に入って、色々と考えていたら、こんなインスピレーションを頂きました。ありがとう。

    私は嘗て聴いたことがなかった
    ------------------------------------------

    私は嘗て聴いたことがなかった
    只一つとして 言葉というものを 何も
    暗闇の中 シーツの上に横たわり 二人
    耳の奥深く あなたの囁きを聴くまでは
    一つ一つの音節を ゆっくりと 静かに
    心に留まる あなたの言葉を聴くまでは

    暗闇の中の誠実な生き物 それは
    想いの林に奥深く 鹿の様な生き物
    この静けさの中 私達の心に横たわり
    夜の深みへ ゆっくりと歩いてゆく
    一つ一つの音節 それはあなたが
    そっと私の心に寄り添う その足音

    返信削除
  2. Yさん、素敵な詩をありがとうござます。鹿のような生き物、いいですね。やさしい静けさが寄りそって来るようで。あるいは心臓の音のように。イラクサはこの詩を書いている時に「白鳥の王子」という童話が心にありました。白い鳥からの連想かも知れません。

    返信削除