いつかわたしが殺したあなたは真夏の池に眠っている
水天井を睡蓮の花で彩られ 綾なされあなたは
わたしが逢いに来るのをずっと待っている
その白い咽喉をのけぞらせ(わたしが愛したその咽喉仏)
しなやかな四肢をのばしている朝夕を
誰にも知られない あなたは秘密の水脈
繰り返されるアラベスク模様のひとつの装飾のように
あなたとわたしだけの時間がそこにある
乱反射する光にわたしは眩暈を感じる
あなたの指先がわたしの足首を這い
キスして
そこから顔を上げて
睡蓮の葉陰にあなたの切れ長の目が覗く
わたしは岸辺からあなたを見下ろして
あなたの唇がわたしの唇に触れるのを待っている
(そのまま窒息しても 水に引き込まれてもいいとさえ)
けれどあなたは水のなかでずっと黙して語らない
わたしをあの時のまなざしで静かに見つめ返し
それとも日々の泡
あなたの唇がかすかに動いたような気がしたのは
ああその池がどこにあるのかすでに思い出せない
七月の光を浴びながら睡蓮の花が咲いている
怖いくらいに美しいのはあなたを隠しているからだ
水のやわらかなうねりに今もそっと抱かれているように
わたしだけの夢を永遠に見ているように
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