2007年9月20日木曜日
夢の中のあなた
朝私が
シーツの海から目覚めると
あなたがおはようと囁く
寝坊しても怒ったりしない
朝食を作ってくれるだろう
でもあなたは
キッチンから戻ってくることはない
夢の中のあなたはやさしい
夢の中のあなたはいつも私にやさしい
昼私は
ひとりベンチに座っている
あなたは隣にやってきて
小鳥たちと戯れて
私にキスをくれるだろう
でも手をのばしても
あなたの肌に触れることはない
夢の中のあなたはやさしい
夢の中のあなたはいつでも私にやさしい
夕星が輝き
夜が大きな翼をひろげると
あなたは私のもとからいなくなる
私はまたシーツの海に潜り
夢も見ずに眠りにつくだろう
あなたの吐息を感じながら
2007年9月14日金曜日
黒いみずうみ
鋭利な湖面をすべってゆく
一艘の小舟
私は黒布で目隠しされたまま
なすすべもなく横たわっている
風 感じるのはすべて風
重い水をかきわけて
舟はゆるやかに進む
盲目の私の世界に響くものは
蘆の乾いた葉擦れのみ
蘆はおそらく孤独なのだろう
だから風に揺すられている
さわさわと
意地悪な風に揺すられながら
秘事をささやいている
あるいは罪を
終わらない夢を
私は罪びとである事に甘んじ
陶酔 抱(いだ)くのはなべて陶酔
行きつく所まで流れてゆくだけで
ふいに飛び立つだろう
水鳥の鋭い羽ばたきが
湖面に落とした波紋のように
私の心に広がる愛の痛みが
思い出させてゆくのだ
何もかもまぼろしだったと
夢想の岸から遠くはなれて
舟はやがて中心で歩みを止める
私は気だるい身体(からだ)を起こし
目隠しをそっとはずすのだ
そして水鏡に見るだろう
私を見返す
あなたのふたつの瞳を
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