黒いみずうみ
鋭利な湖面をすべってゆく
一艘の小舟
私は黒布で目隠しされたまま
なすすべもなく横たわっている
風 感じるのはすべて風
重い水をかきわけて
舟はゆるやかに進む
盲目の私の世界に響くものは
蘆の乾いた葉擦れのみ
蘆はおそらく孤独なのだろう
だから風に揺すられている
さわさわと
意地悪な風に揺すられながら
秘事をささやいている
あるいは罪を
終わらない夢を
私は罪びとである事に甘んじ
陶酔
抱(いだ)くのはなべて陶酔
行きつく所まで流れてゆくだけで
ふいに飛び立つだろう
水鳥の鋭い羽ばたきが
湖面に落とした波紋のように
私の心に広がる愛の痛みが
思い出させてゆくのだ
何もかもまぼろしだったと
夢想の岸から遠くはなれて
舟はやがて中心で歩みを止める
私は気だるい
身体(からだ)を起こし
目隠しをそっとはずすのだ
そして水鏡に見るだろう
私を見返す
あなたのふたつの瞳を
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