ときどき僕は
ときどき僕は
草のなかを歩いてみる
さらさらと風が流れてゆく
草穂が膝頭を撫ぜれば
なつかしい思いに満たされる
ときどき僕は
人に話しかけてみる
ときどき
誰とはなしに笑いかけてみる
ときどき
雲間から陽が射せば
忘れていた淋しさに火がつくだろう
理由もなく花を引きむしり
乱した指さきに血がにじんで
ときどき僕は
歌をくちずさんでみる
ときどき
胸にしまった誰かを思ってみる
そして
陽だまりでまるくなって
閉じたまぶたに光が踊るのを見るだろう
虹がかかるのを見るだろう
ときどき僕は
何も考えられなくなる
夕陽が音のない部屋に忍び込めば
辺りにいつかの海が寄せてくる
鴎の声がして 耳の奥で遠く
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