2010年7月14日水曜日

海のあなた



あなたのくちびるから海がこぼれる
塩からい水が胸を濡らすから
わたしは溺れないように息をする
そっと息をする


空の高みが恋しいと指先をのばし
両手を広げてみるけれど
あなたの海が追いかけてきて
わたしの心は黄昏になる
そして星がまたひとつ燃えてしまう
胸に焼きつけられてしまう、から


どうか鴎になって飛んでいく前に
口移しで海をわたしにください
潮の香りが満ちてきて
小舟のように揺れるでしょう
どこまでも流されて
あなたがすべて海になるまで
海が残らずあなたになるまで


     それからわたしは海を抱いて
     わたしは海を呑みこんで
     わたしは海を身ごもったまま


いいえ 本当は翼なんていらないのです
あなたの膝枕でこうして
いつか魚になって暗闇で眠るように
ずっとそうしていられたら、と



4 件のコメント :

  1. ため息が出る程、良い詩ですね。首を横に振りながら、何度もため息をついてしまいます。きっと今日は、この詩のイメージが一日中、頭を離れないんだろう。

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  2. Yさん、ありがとうございます。海が好きなので、海の詩を書く事も多いですが、これは恋人を海になぞらえて書いてみたものですね。海に限らず、私にとって恋愛は水のようなものだと思いながら。

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  3. この詩がキッカケとなって、海と空のイメージで一杯になり、遠く逢えない恋人に宛ててみました。

    二人の物語
    ――――――

    あなたは海
    私は空
    碧(あお)から茜
    黒から黄金(こがね) そして灰へと
    二人は恋をしてるから
    二人の色はいつも一緒

    海が空に包まれてるのか
    空が海に横たわるのか
    あなたは深い心を話す
    私は遠い星を唄う
    それは潮騒
    それは風の音(ね)

    二人はもう歎かない
    太古の昔 運命(さだめ)によって
    永遠(とわ)に離されてしまったこと
    陽の光 月の影
    微笑み合うことしか叶わず
    涙でしか触れられないことさえ

    あなたは空
    私は海
    月の影 陽の光
    風の音 潮騒
    碧から茜
    黒から黄金 そして灰へと

    Tale of the two
    ―――――――

    You are the sea
    I am the sky
    From azure to coral
    Black to gold then to ash
    Always in the same hues
    For we two are in love

    Is the sea enveloped in the sky?
    Or does the sky rest on the sea?
    You talk of the deep heart
    And I sing the stars up high
    It is the surf whispering
    It is the wind humming

    We no longer deplore that
    Far in the bygone time
    Destiny tore us for eternity
    Light of sun, shadow of moon
    That we can but smile back
    That we can but touch through tears

    You are the sky
    I am the sea
    Shadow of moon, light of sun
    Whispering surf, humming wind
    From azure to coral
    Black to gold then to ash

    霊感をありがとう!

    以前にコメントした、岩瀬さんと私の技法が似ている、というのが、この詩で見て頂けるかもしれません。

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  4. 美しい詩ですね。こちらこそ感謝です。言葉のいらない、たぶん見つめ合うだけの恋を知らずに描いていたのだなと感じました。Yさんもそうなのですね。自分では意識していなかったのですが、不思議ですね。

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