緑の人
あの人は風だった
緑の髪をなびかせ瞳の奥に、あれは
夜明けの光をたたえて 水のようにやわらかい
あの人は風だった
わたしを見つめて笑う 流れる雲を空を映して
あの人は草だった
やさしくからみつく指で慰めて春のように
ひとつの歌が芽生え ひとつの花がふるえて咲いた
あの人は草だった
抱きしめると心臓の音が、それだけがすべてだった
その涙をつたって生まれてきた
ただその涙を拭わずに生きてゆく
あの人は風だった わたしも風だった
緑の髪をなびかせ声の限りに呼んでいる
まだ見ぬ明日を朝を、どうか
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