瓶詰の夜
読みかけの本を閉じて結んだ髪をほどく
夜は音もなくすべってゆくベルベット
やわらかに項(うなじ)にまとわりつき
わたしは旅に出る 夜の時間に分け入り
夢の中で出会ったあなたに会いにゆく
待っていて あれは青々と繁る木下闇
それとも丘に続く長い道 今、月がのぼる
流れ星のようにわたしも落ちていった
あなたの心に落ちてどこにも行けず
名もない星を抱いて夢を見ている月
満ち潮のように夜も落ちていった
残されたのはいとしい、あなたのその痛みだけ
草原を渡る風はいつかの唇に触れて
あるかなきかの言葉を告げた
足もとの瓶が倒れて水が流れてゆく
やがて川になりつま先を濡らし心を濡らし
どこへ流れてゆくのだろう 明日さえ知らず
光を求めて手をのばす またページをめくるために
夜明けがさざ波のように満ちてくる
あなた、どうかおやすみの長いキスを
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