2015年9月15日火曜日

九月の少年



やがて九月、と声が耳もとをかすめてゆく
窓辺にはレースのカーテンがひるがえり
夏の少年が静かに微笑む


君はどこからか来て何も言わずに去って行った
知らない言葉だけがわたしをさみしくさせて


九月の慰めは夏の衰えを隠すように
少年はきらきらと水をしたたらせる
光りをくちびるに軽く含んでさえいる


うつくしい、といつか囁いた日々


愛されていたその瞳に空を映しているの
雲がゆっくりと流れてゆく


いいえ それは風だったろうか
君が溺れた、白い足を水草にからませて
音もなく流れてゆく わたしのこころを
この風のように



4 件のコメント :

  1. 1年に12ある月々を詩歌にするなら9月が一番だと思います。その次は3月と5月で、それぞれ早春と初夏です。ならば9月は初秋?いやいや夏の終わりです。ここまでが私の枕詞。詩とは難解なものというのが私のいつもの感想。この詩の主旨はなんなのだ?それは詩人たちにまかせておき、ずうずうしくも私の二十歳の夏に重ねあわせてみました。少年というには少々塔が立っているかもしれませんが、まぁ、中身はまだ少年です。そしたら三分の一くらいわかったような気がしました。どういう風にわかったか?内容を書くべきですが、立原道造のソネットが身に沁みる季節でした。水草に足を絡めて溺れはしたものの、風は甘口だったかもしれません。

    返信削除
  2. 春麗さん、九月は初秋と表現するには物足りなく、やはり私にとっては夏の終わりです。この詩は昔書いた詩にちょっとインスパイアしています。それは少年の詩だった訳ですが、作者だけのささやかな感傷ですね。でも、夏の終わりには少年のイメージがあるのです。失ったものを遠くなつかしむ感傷を九月に感じて。

    返信削除
  3. 初めまして。詩のブログを探していて、流れ着きました。凄く素敵な詩群ですね。あぁ、やっと良い場所を見つけた!!、という思いです。これからじっくり読ませて下さい。楽しみです。

    返信削除
  4. Yさん、初めまして。見つけて下さって嬉しいです(びっくり)。好きなものばかり書いていますが、どうぞよろしくお願い致します。私の詩を読んで下さってありがとう。

    返信削除