2016年9月27日火曜日

あいしているの舟



誰も知らない海でした、(けしてあなたのほかには)


舟は出てゆく
夏の入り江、あなたの瞳の奥を


白い鳥は羽根を休めることなく
空にすべる手紙


返事はいらない、ただひとことのさよならを


     *


誰かをおぼえて湖になる、(それがあなただとしても)


舟は出てゆく
秋のさざ波、あなたの吐息の影を


赤い落葉は誰にも知られず
水面にこぼれる告白


口に出していえない、あいしているのすべて



2 件のコメント :

  1. 第2外国語のように、部分的にわかりそうな気もしますが、第1外国語ほどには通じない難解さが詩というもの。しかしながら苦い味ではありません。ところどころに動詞が省略されています。たとえば「飛ぶ、書く、映す」。この3つの動詞をすべて「見る」の一語に置き換えてもよさそう。登場人物はふたりしかいないのだから、どちら側の立場で眺めるか、主体と客体の関係。第三者の立場で観ることも可能。あいしているは「Iing=Iしている」、つまりひとりで思い事をしている、という新説を思いつきました。舞台は海、やがては閉じられて湖化する。「*」は何かなぁと悩みました。「舞台の反転」あるいは「時の経過」を示す象形文字。写真貼付が可能なら、紅葉が落ちてゆく水面の様子を映したいのです。

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  2. 春麗さん、私は「ing」という言葉が好きなようです。現在進行形。行き先が分からないような、それでいて終わりのない行為のような――。ひとりで思い事をしている、という説も素敵ですね。初めは二場面とも海だったのですが、秋は湖がしっくり来ます。うーん、閉じられて湖化する、言い得て妙です。。「*」は「場面の転換」ですね。「舞台の反転」でも構いません。でも、「時の経過」は私的にはちょっと違うかも知れず。そう、やはり違う場面なのです。

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