2012年1月12日木曜日
おはなし、森の
たぶん、枯葉を踏んで
(小気味良いステップで)
たぶん、あなたの森を歩く
あなたの匂いがする森は
いつかどこかで歩いた道
頬を寄せると風が囁く
おはなしをしよう
ブランケットにくるまって
あるいは樹木の梢を透かし
仰ぎ見る青い空
おはなしをしよう
わたしだけが知っている花
あなたがいつか差し出した花を
こうして髪に飾って胸に抱いて
雪が降る 瞳に雪が降る
瞳のおくの隠された湖面に触れて
アイシテル アイシテル
つぶやいては溶ける真冬の花の
笑っているような
(泣いているような)
そして陽射しがこぼれて明るい
あなたのいとしい森を歩く、歩く
たぶん、わたしを待っている
いつかどこかに続いている道
2011年12月8日木曜日
Colors
こころさえ、雲を光を追い越してひるがえる風みずいろをよぶ
雨はやく言葉を奪い流れゆくたどる指先このうすみどり
風だけがよんでいる道二人ぼっち朽葉いろした秘密かぞえる
頬杖の窓辺にあんずの夕陽して奏でる音があればソラシド
白き朝、旅のこころが兆す夜遠くはなれてくちづけを君
あけがたの灰、夢の果て燃え上がるただ永遠は胸を焦がす火
すみれすみれ痣のようにか胸に咲くほのかに香るあこがれ今も
流れ星尾をひいてゆく思い出に銀の knife を沈める夜更け
手のひらに雪は降りしく消えてなおさびしさよりも赤く残るは
2011年11月10日木曜日
わたしの天使は
わたしの天使は飛び降りる
高い塔からまっさかさまに
天使は翼を広げたまま
わたしへ向かってほほえむだろう
雪が降るように真っ白に
翼は光る冬のはじめの陽射し
わたしのもとへ落ちてきて
わたしのこころへと落ちてきて
この窓をあけてある朝見た空のいろ
いつまでもまなうらに焼きついている
何度も何度もこの窓をあけて生きてゆく
何度も何度も思いはいつも同じでも
どうどうめぐりの河であっても
わたしはここに居る
ここに立って見上げている
ある朝目覚めるよろこび
あれは冬のはじめの陽射し
とても遠い遠い場所から時をこえて
あれは高い塔から降りきたるひかり
それを両手で受け止めるために
どうかわたしのもとへ落ちてきて
わたしのこころへと落ちてきて
わたしの天使は飛び降りる
この朝もその朝もめぐるひかり
わたしにやさしくほほえみながら
2011年10月12日水曜日
ねむり
おやすみ、あなたの黒髪にまだ青い葉をからませ
おやすみ、蔦は赤く、赤く血の色のよう
あなたの血のように赤く 私の血のように赤い
蔦を体に這わせ 木の葉の雨の降りしきるなか
そっと夢みる秋は遠い火の匂いがする
誰かが焚いた火を静かに守るように
あなたのなかで燃え続けるいのちが
いつしか心をあたためていつしか指も足先も睫毛も
焦がして けれどその火から目を逸らさずに
じっと見つめる森の彼方はこうして夜も昼も明るい
その火はあなたを強くするだろう こんなにも
その火はあなたをやさしくするだろう まるで
あなたの血のように赤く 私の血のように赤い
( 木の葉は降り積もる あなたの時間を満たすため )
おやすみ、あなたの黒髪はまだ若く花が似合うとしても
おやすみ、匂うように白い無垢を瞳のおくに宿して
2011年9月7日水曜日
恋しくて
恋しくて雨のソーダ水飲み干したはじける泡よ恋しくてまだ
ものがたり、は続いている泣きながら夜そして昼あなたの時間
たわいなく戯れ過ぎる風としてもふりむかないで首筋にただ
目の奥を覗くよろこび楽園はふいにほほえむ見つめ返して
僕たちは見知らぬ言語さびしくて泣いて笑ってまたくちずさむ
いつかいつか、胸の谷間で啼く小鳥いつか遠くへ飛ぶ合言葉
海を聞くそと頬寄せて君を聴く胸に満ちては交差する波
悩ましく驟雨が去ったあとの空虹を探して星をみつけて
風すこし明るいひなたまどろんで夢の中まで恋しいひとり
2011年8月10日水曜日
夏鳥へ
いつか飛んだ空をおぼえている
風を切ってどこまでも青い玻璃の岸辺
さかしまに映る幾千の森 草 花の密度
いつか鳴いた声をおぼえている
朝靄の彼方から裂けた絹糸のような
あれはなつかしい 切なる声
心は渇いているから空を見上げる
届きそうで届かない指さきに
流れてゆく風のララバイ
明日をつかむ指はまだ細く頼りなく
飛ぶすべを知らないのです
飛び方が分からないのです
声にならない声はどこかへ運ばれて
ああ もう行方不明になってもいい
もしか届いたなら唇に含んで下さい
私であったかも知れない吐息を
誰かであったかも知れない翼を
唇で触れてどうかやさしくその舌を這わせて
風の中にふるえるただひとつの夢よ
目覚めたのちすべてを越えて飛んでゆこう
あなたのもとへ 遠くへ
2011年7月7日木曜日
青らむ、
青らむ、夏の
わたしの首すじ に
風がひそかな挨拶をおくる
揺れやまぬ草の穂先のいじらしさ
痺れた指でもてあそびながら
あなたのことをかんがえる
青らむ、人の
まなじりの鋭さ に
わたしの夏がはじまってゆく
白いドアからのぞく腕の地平線
あなたの手のひらから潮の匂いがして
海にすでにさらわれている
青らむ、波の
響きが して静か
登録:
投稿 (Atom)