2007年7月26日木曜日

楽園



誰も知らないその庭に咲く薔薇
朝一番の雨に濡れた赤い薔薇を求めて
僕はたどり着いた 足をひきずりながら
かぐわしいその香りを嗅げば幸せになると
ただひとつの愛を得られるとずっと信じていた


青い鳥が鳴く小窓に髪を梳く人よ
君の透きとおる瞳は何を見ているの
木陰で見つめる僕など知らないとでもいうように
君は恋するまなざしでやさしく歌う小夜曲(セレナーデ)
白い指先から櫛がすべり落ちるのをそっと待っていた


ああ 銀の雨に濡れそぼるその庭には何もない
ただ茨の繁みがはばむように生い茂るだけの
何もないと知っていた 棘が肌を切り裂くだけの
それでも僕は血を流しながら待っている
いつか茨が赤い薔薇に生まれ変わる事を


いつか白い雪が辺りをすっかり埋めつくして
僕が誰かもすっかり忘れた頃に薔薇が咲く
そんな夢をずっと見ている 真綿にくるまれたまま
否 僕の凍った瞼の裏に焼きついてはなれないのだ
君の指先からきらり音もなく櫛がすべり落ちるさまが


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