2014年5月27日火曜日

だれもしらない庭で



だれもしらない庭にだれもしらないあなた
わたしたちは夢をみた
はつ夏のひかりのなかで
あれはあなたの花
ジャスミンのむせる匂いに
秘密めいたあそび くちびるの感触をおぼえた


だれもしらない庭をわたしたちはもとめた
若葉が降りそそぐあなたの目のなかで
ただひとつの言葉をさがした
魔法だった その言葉をくちに含んだ時から
わたしたちの世界ははじまる


夏草がからまるわたしの指に
あなたはそっと手のひらを重ねて


ね、


ささやいた 小鳥のような仕草で
息がとまるくらい 静かな風が流れて


翼が生える夢をみた
きっとわたしたちの背中で育っていた
ひととき の愛
それとも千年のねむりを貪るように
わたしたちは夏草を泳ぐ 終わらない遊戯


ね、


だれもしらない庭にだれもしらないあなた
指をつないで眠った
明日など知らないほほえみで
あなたがたとえわるいひとでも
あなたをたとえ見失ってしまったとしても
ジャスミンの花を髪に挿して
若葉が降りそそぐあの庭で



2 件のコメント :

  1. 二十歳のころを思いだすようです。
    あまりにたくさんのできごとを盛り込んで、
    どれもが初めての経験で、未知で、居場所さえもわからずに、
    そして/だから破綻してしまった若葉のような時代を、ね。

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  2. 春麗さん、私も若い頃を思っていました。
    だれもしらない庭はきっと何も知らない無垢な心でしか行けない場所です。
    夢の名残りのように、どこかにあるそんな庭を今でも探してしまうのです。

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