2015年2月19日木曜日

白い馬(あるいは青い扉)



青い扉の向こうに
雪原が広がっている
かすかなノイズ
そのなかに紛れるように
一頭の白い馬
あれはあなたが放した淋しい夢だ


指で触れて
夢だと知りながら
その長い首を抱きしめる
あなたの淋しさに触れた時から
私はあなたに恋をした
雪原に燃える一条の火のように


誰もいない
私たち二人だけの世界
雪がほろほろと降るなかを
馬は私を背に乗せて駆けていった
どこまでも
私たちは燃え盛る炎だった


私たちは決して消えることのない
火だった
(あいしている あいしている)
いつか世界の果てにたどりつけるように


青い扉の向こうに
雪原が広がっていた
一頭の白い馬
まぼろしのようにまなざしを駆けていった
青い扉が静かに閉じて
私はひとり涙を流す



6 件のコメント :

  1. 白い馬、青い扉、
    それを見ているひとは炎の色、夢の色、
    こぼれる涙はたぶん藍色。
    白馬というだけで恵まれたステータスなのに、
    なんて素晴らしい境遇なのでしょう、
    このお馬さんは。

    今年はあまり雪が降りませんでした。
    関東地方の太平洋岸はもう間もなく春です。

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  2. 春麗さん、こんな夢を実際に見た事はありませんが、雪原に白い馬は見えにくそうです。白い馬はもう去っていくようで、春ですね。青い扉の向こうはきっと花畑が広がっているでしょう。その花色が黄色だと思うのは、やはり原風景がどこかにあるからでしょうね。そしてそこにも失くした白い馬が・・・。

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  3. 一体何なんだろう。本当に非の打ちどころの無い美しい詩で、参る。どの連も良いけど、三連目の最後が一番好き。4連目だけ、6行で合わせていないバランス感も好き。そして、最後の連で最初の位置に戻ってくるカメラワークも良い。只々、良い。

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  4. Yさん、私の詩はなぜか定型になってしまう傾向があり、どこかしらは崩して書くように心がけています。たいてい思いつくまま書いてしまうのですが、扉は閉めるものだという事に書きながら気づいたのでした。これは夢のお話ですから、そっと閉じてしまおうと。

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  5. 昨日から何度も、この詩の事を思い出している自分がいます。私自身も詩を書くのですが(名前にリンクしました。ご覧頂けると嬉しいです)、いつも「人は只一編の詩の為に、その詩人のファンになる」と思って、一編々々を最高傑作にしようと心掛けています。この詩一編で、私は岩瀬さんの大ファンになりました。このサイトを置いておいて下さって、本当に感謝で一杯です。ありがとう!

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  6. そんなに感銘を受けて下さるなんて、詩人冥利に尽きます。ありがとうございます。Yさんもやはり詩を書かれるのですね。拝読しました。私は恋愛詩を主に書いているのですが、あなたも愛を書いておられるのだなと思いました。フランス映画のようなエスプリを感じて。よろしかったら、サイトをリンクさせて下さいね。人はただ一編の詩のために――その言葉を私も胸に。

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