2014年6月24日火曜日
バラッド
さくら花、いつか出会いを繰り返し君のひとみにこぼれるバラッド
花弁に触れてひかりは遠ざかるこのひとひらに惑うこころを
新緑の夜の涙になきぬれてまどろむ夢に風は滴る
いつか君の心がほしいいつか君せつなくてただ立ち止まる風
やさしさはポケットの中に今もあるソウルメイト、君と僕とは
昼の月夜の太陽夢を見るまだみぬ「声」のその囁きを
雨のなかそっと触れ合うくちびるの降りしきるキス、海があふれる
幾筋の涙をきらり光らせて魚影ひしめく街角の雨
夢だけが僕らを渡す雨上がりさしだす指に虹がかかる日
2014年5月27日火曜日
だれもしらない庭で
だれもしらない庭にだれもしらないあなた
わたしたちは夢をみた
はつ夏のひかりのなかで
あれはあなたの花
ジャスミンのむせる匂いに
秘密めいたあそび くちびるの感触をおぼえた
だれもしらない庭をわたしたちはもとめた
若葉が降りそそぐあなたの目のなかで
ただひとつの言葉をさがした
魔法だった その言葉をくちに含んだ時から
わたしたちの世界ははじまる
夏草がからまるわたしの指に
あなたはそっと手のひらを重ねて
ね、
ささやいた 小鳥のような仕草で
息がとまるくらい 静かな風が流れて
翼が生える夢をみた
きっとわたしたちの背中で育っていた
ひととき の愛
それとも千年のねむりを貪るように
わたしたちは夏草を泳ぐ 終わらない遊戯
ね、
だれもしらない庭にだれもしらないあなた
指をつないで眠った
明日など知らないほほえみで
あなたがたとえわるいひとでも
あなたをたとえ見失ってしまったとしても
ジャスミンの花を髪に挿して
若葉が降りそそぐあの庭で
2014年4月23日水曜日
アグネシュカ 夜明けの森
夜明けの森を夢見た わたしの閉じたまぶたは
光によってひらかれる あなたの白い
春のような指さきで
わたしのためにあなたは生きていた
わたしが悲しいときははらはらと涙を流した
嬉しいときはあなたは花のように微笑んで
黄昏がさびしいと
水のきらめきが美しいとこころを痛める
光と影のようにいつも隣り合って過ごした
もうひとりのわたし
手をのばせば今すぐあなたに触れるだろう
すみれの花を抱えて途方にくれないように
花の匂いにむせてあなたを見失わないように
一心に森を駆け抜けた 生まれたばかりの足で
(どこかで鐘が鳴り響く 耳の奥で
いいえどこか遠い湖の底で)
橋を渡るとあなたが待っている
アグネシュカ 青い瞳にわたしの湖が映る
揺れる長い髪にくちびるを寄せて
わたしはもうひとりのわたしを抱きしめる
あなたをずっと夢見ていた
アグネシュカ 夜明けがもうすぐやってくる
あなたとわたしがひとつになるように
どうか白い指をからめて
あなたに導かれて 夜明けの森を夢見た
森は眼前にひらかれる 翼をひろげた鳥として
ふいに飛び立つ空はすみれいろ
(どこかで鐘が鳴り響く 耳の奥で
いいえどこか遠い湖の底で)
あなたのためにわたしを生きている
2014年3月19日水曜日
邂逅する夢
明け方の目をみひらいて駆けてゆく夢は邂逅すうつくしい馬
やさしさをあつめて君の手のひらにスノードームの粉雪の降る
君に会うために生まれてきたという光射す薔薇窓少女のねむり
頬杖で過ごす冬日のオルゴール約束の日は春は近づく
遠ければ歩き続ける道のあり見上げれば空鉄塔に月
恋しさに砂時計をそと傾ける春まだ浅い君の海辺よ
目の奥を濡らしていつか過ぎてゆく雨のサーカス、青いこいびと
汚れなき翼をあげるゆびさきで君のイカロス抱きしめるため
くちづけをかわして遠く旅に出る Adieu 太陽と月の輝く
2014年2月19日水曜日
花ぬすびと
ある日窓から花を投げた
あのひとが受け取ってくちびるに寄せてから
あのひとが好きになった 恋をした
みずいろの花 むらさきの花 そしてあかい花
あのひとはすべて受け取ってそっと胸にしまった
花ぬすびとのように
あのひとは何も言わなかった
互いの瞳のおくを遠く見つめるだけで
ふたりのあいだを雨が降り雲が流れ風が吹いた
思いを 胸にあるはずの幾千もの言葉を
あのひとはすべて受け取ってそっと胸にしまった
異邦人のように
ある日窓から小鳥を放した
きみどりの鳥 ももいろの鳥 そしてしろい鳥
晴れた空に鳥たちがハートのかたちを描いて
あのひとはほほえんでただ両手をひろげた
わたしは窓を開けて飛んでゆく
あのひとの腕のなかへ
あのひとのこころのなかへまっすぐに
2014年1月22日水曜日
手のひらの花、そしてあのひとの雪
(雪降る時間 あのひとの指がきらりとひかる、
わたしはくもりガラスの向こう側で)
あのひとを思うと 白い雪が降って、
わたしの肩にも髪にも舞い落ちる
そしてわたしは あのひとですべて埋まってしまう
どうか今すぐ来て ここに来て
雪のなかでくちづけて、あのひとを忘れてしまうよう
この世界はあのひとの雪でできている
(世界はガラス細工の函のように わたしを、
閉じこめてうつくしい)
あのひとの手のひらで 花が咲いている、
烈しく火ともえて あかく狂おしくそれは
わたしの胸のおくを焼き焦がす
どうか今すぐ来て ここに来て
雪のなかでもこぼれないようにわたしを支えて
こころは遠く 燠火ばかりが香る
(手のひらをのべると すぐそばに感じる、
指と指をむすべば 花はいとしさで)
わたしの 手のひらにも花が咲きはじめる、
どうかここに来て 今すぐ来て
あのひとは抱きしめてはなさないまぼろし
それともやさしく絡みつく指さきで
奪っていこうとする、このちいさな世界さえも
わたしはわたしのなかに咲きほこる花になる
(雪降る時間 あのひとに抱かれてねむる、
くもりガラスの向こう側でわたしは)
2013年12月12日木曜日
岸辺にて
君は舟でわたしの岸に逢いにくる瞳のおくの蒼いみずうみ
思いだけが水脈(みお)引いてゆく水の上恋すればただ紅葉はあかく
言葉さえさらわれてゆく風の街耳から耳へささやかれつつ
いつかまた口ずさむうたやがてまた街はたそがれ秋風のなか
黄金に銀杏は燃えて月に日に降り積もるゆめ日々は過ぎゆく
夜明けに、二人だけの星生きてゆく鼓動がいつも胸にかがやく
ぼくたちは夢を見ているカルーセルゆられゆられて世界の果てへ
いつの日かめぐり会う旅野を走る風を分けゆくなつかしい馬
みずうみに鳴る鐘の音岸辺にて幾夜を君のくちづけを待つ
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