2023年10月10日火曜日

見知らぬ冬












 霜葉ふむ革のブーツの小気味よさこのままいつか見知らぬ冬に

窓ガラスくもる吐息にだまりこむ人のしぐさのその残酷さ

薔薇そうびあかい棘さす指先の血のにじむ孤悲こいするどく痛く

指と指触れあうあとの切なさは白緑色びゃくろくいろに沈むみずうみ

雪片が水にふれては消えてゆく記憶の湖面忘れるための

せつな刹那やさしく閉じて音もなく真綿のように雪は降りつつ

薄氷割ってさよなら砕けちる朝のひかりの白いくちづけ

はだかの手枯れた木肌に押しあてて泣くだけのことひとりごころは

かじかんだ指先つよくドアをあけそれきり一人見知らぬ冬へ


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